2019年3月7日

津田学園高校(三重) 17年ぶり3度目

 

 地道に流す汗は、大舞台で輝くためのパスポートだ。MAX148キロ。大会屈指の球速を誇っても、前が冬場に取り組む練習内容に派手さはない。例年より多めのランニングで下半身をいじめ、体幹を徹底的に鍛え、動画を見ながらフォームを固める。「昨秋の東邦戦で課題が見えた。それを解消しなければ、甲子園で勝てません」。意志の強そうな瞳に光が宿った。
 3試合30得点の猛打で決勝まで勝ち進んだ昨秋の東海大会。一人で投げ抜いた前の疲労は、東邦戦でピークに達していた。「先頭打者に四球を与えて、いつもと違うな、と。体のバランスが崩れ、フォームがバラバラになった…」。県大会前に左手首の腱鞘(けんしょう)炎にかかり、調整不足だったことも災いした。3回途中7失点で降板(7回に再登板)。2―10の大敗を喫し、快進撃の余韻など吹き飛んだ。
 「連投しても、へばらない体力をつけるのが一番。フォームでは、もっと腕の振りを速くしたい」
 掲げる理想は高い。動画の再生回数は、大谷翔平(エンゼルス)のものが最多。ゆったりとした初動と、力強い腕の振りを参考にする。フォームに限らず、野球で壁にぶつかった時は兄・恵弥さん(19)に相談のメールを送る。2学年上の兄も津田学園野球部出身。同じ投手で、将来を期待されたが、負傷が多く、ほとんどマウンドに立てなかった。「兄の分も頑張らなきゃ、といつも思っています」。だれかのためなら、人はより強くなれる生き物だ。
 入部当時、前の体重はわずか68キロだった。MAXも128キロ。努力を重ね、背番号1を勝ち取った右腕に対する、佐川竜朗監督(40)の信頼は厚い。「常にバランス良く、145キロを出せるように、筋力を上げている段階。まだまだ伸びしろはあるし、春には楽しみな投手になっているはず」。指揮官は、17年ぶりとなる選抜の目標をこう表現した。「最終日まで野球をやろう、と。決勝戦までいけば、結果は…」。その言葉にうなずいた後、前は続けた。「個人的には星稜の奥川君と投げ合ってみたい」。剛腕対決を夢見て、前はレベルアップを続けていく。

(スポニチ発行2019センバツ特集号から)

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