2019年3月11日

智弁和歌山高校(和歌山) 2年連続13度目

 

 新たな歴史は平成最後の大会から始まる。前任で恩師でもある高嶋仁監督(72=現名誉監督)から重たいバトンを引き継ぎ、昨年8月に就任した中谷仁監督(39)は表情を引き締め、力強く信念を語った。
 「僕の高校野球の考え方は高嶋先生につくってもらったもの。だから特別に意識しなくても“高嶋イズム”は体の中に残っています。ここを変えたいと思うものはありません。何を乗せていくかということを考えたい」
 前監督は80年から同校を指揮し春1回、夏2回の甲子園大会優勝を果たすなど監督歴代最多68勝を誇った。中谷監督自身も主将として1997年夏の優勝に貢献。同年ドラフト1位で阪神から指名されたが「(前任者は)偉大すぎるので比べられるのは当然です。その覚悟はできています」と話しながらも、高校野球指導者としての難しさを感じている。
 伝統の猛練習に加え、重視するのは自主性だ。平日の練習は約6時間だが、うち2時間は選手自身でメニューを決める。
 「甲子園に出ることも、そこで結果を出すことも大事。でも選手には“その先”を見てほしい。上のレベルで野球をするなら、目的意識を持って練習に取り組んでほしい。指示待ちでは、社会では通用しないので」
 求められれば、プロでの経験談や一流選手の野球への向き合い方を惜しみなく伝える。読書を奨励し、選手の性格に合わせて蔵書を貸し出す。新米監督らしく、選手の成長を促す方法論を日々、模索している。
 捕手出身の新監督に多大な影響を受けた1人が、高校から捕手に転向した東妻だ。「捕手は、どれだけ自己犠牲できるかだと思います。周りが活躍できるようにしたい。技術もそうですが、意識するのは人間性の部分です」。遠投125メートルで二塁送球完了1・8秒台と素質は申し分ない。加えて、投手への気遣い、野手陣への声かけなど意識が根底から変わった。昨年も春夏連続で甲子園に出場し新チームからは4番を務める。扇の要はチームメートを輝かせるために、言動で奮闘する。
 中谷監督は17年4月に専任コーチに就任し同時期に入部した3年生からは「監督」ではなく「中谷さん」と呼ばれる。「“仁さん”だけはやめようなって言いました」と笑う。“同期”とは常に「優勝」を口にし合ってきた。合言葉を実現する時がきた。

(スポニチ発行2019センバツ特集号から)

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