2019年3月13日

米子東高校(鳥取) 23年ぶり9度目

 

 才能が開花するきっかけは、どこにあるか分からない。福島悠は、昨夏まで潜在能力を持て余していた。1メートル85、95キロの高校生離れした肉体。西武の中村剛也が好きで、毎日動画でフォームを研究する向上心も持ち合わせていた。それなのに、結果が出ない。昨夏の鳥取大会初戦の2回戦で米子松蔭に敗れた後、紙本庸由(のぶゆき)監督(37)は打力を生かすため捕手から一塁へコンバート。そして未知の可能性を引き出す一言を口にした。
 「何かをするということは、何かをしないということだから」
 あまりに哲学的な言葉は、少し解説を要する。ストレートを待つ=変化球を待たない。つまり打席でカウント、状況、風、相手投手の心理などを考え、決め球を絞る重要性を説いたのだ。
 「それまで、僕は漫然と何も考えずに打席に立っていた。この投手はどの球種が多いとか考えるようになって、結果が残せるようになった。すべてのボールを待つのでなく、捨てる勇気が大事なんだな、と教わりました」
 不動の4番を期待された昨秋。左大腿裏の肉離れで出遅れた県大会の借りを中国大会で返していく。1回戦の開星戦で延長10回にサヨナラ打。乱打戦になった準々決勝の倉敷商戦では、7回1死満塁から走者一掃の適時二塁打を放った。勝てば甲子園出場を確実にする準決勝・呉戦では4安打3打点。全4試合で打点を挙げる働きは、躍進するチームの象徴だった。
 高校通算12本塁打の大器は現在、フォームで試行錯誤している。クローズドスタンスをオープン気味にモデルチェンジ。「いい感じなので、これでいこうと思っています」。愛嬌(あいきょう)のある笑顔は、打者として目指す中村より、同じチームで昨季本塁打王に輝いた山川穂高に似ている。
 「フライを打つようなイメージで大きいのが打てるようになりたい。甲子園ではガツガツ初球から積極的に振っていきたい」
 天性のスラッガー。聖地に描く放物線を夢見ながら、福島悠は静かに爪を研いでいる。

(スポニチ発行2019センバツ特集号から)

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