創刊75周年記念企画「スポニチと私」入賞作品発表‼

最優秀賞は富山市の石黒義朗さん 他優秀賞5名の作品を一挙掲載‼

 昨年末からスポニチ紙面とコーポレートサイト上で募集させていただいた75周年記念企画「スポニチと私」は、日本全国からたくさんの読者・ユーザーの皆さまのご応募をいただきました。誠にありがとうございます。

 厳正なる審査の結果、最優秀賞は富山市の石黒義朗さん、優秀賞の5名は小澤和夫さん、にじのいろさん、堀田実花さん、酒井麻里央さん、逸見すい子さんに決定しました。最優秀賞は賞金5万円、優秀賞は賞金1万円を贈呈させていただきます。

■最優秀賞 石黒 義朗さん(富山市)

 ここに一通の絵ハガキがある。「追球」の内田雅也氏からいただいたものである。第三者にとってはただの絵ハガキだろうが、私にとっては大事な宝物である。

 さて、私は甲子園球場で野球を見るのが好きだ。阪神の試合は言うに及ばず春・夏の高校野球も大好きだ。とりわけ暑い中で行われる夏の大会が良い。初日全校が行進する開会式は圧巻である。私はかねがねこの式典で整然と歩くお嬢さん方は誰なのか、ものすごく関心があった。各校のプラカードを持って先頭に立つ人、国旗・大会旗を持つ人もいる。又開会式でメダル授与の時金銀のメダルをのせたお盆を持っているのは誰なのか等々。

 そうした折、偶然「追球」に「プラカード嬢の姿勢」(2017年7月14日付)が掲載された。私はこれ幸いと内田氏宛に手紙を出したのである。そして返事としてこの絵ハガキを頂いた。このハガキから市立西宮高の先生方も生徒達に対しものすごく気をつかっておられることを知ることになる。(原文ママ)

注)「追球」とはスポニチ編集委員・内田雅也の野球コラム。「プラカード嬢の姿勢」は大阪版に掲載。

【総評】内田編集委員との心温まるエピソードをお聞かせいただき、ありがとうございました。委員からの絵ハガキをこれほどまでに大切にしていただいていること、感謝の念に堪えません。読者の皆さまに支えられて今のスポニチがあることを深く実感させられる素晴らしい作品でした。石黒さまのようなファンの皆さまのためにも、今年こそ全選手での入場行進復活をスポニチで報道できることを願ってやみません。

【内田編集委員より】かばんには常に絵はがきや便箋、切手を入れ、読者の方からの投書には返事を書くように努めています。石黒さんからの手紙はよく覚えています。丁寧な筆跡に人柄がにじんでいました。6年前、『追球』で書いた「プラカード嬢の姿勢」への感想と問い合わせで、返事を出したのでした。夏の甲子園大会開会式の写真をあしらった絵はがきでした。それを「宝物」にしてくださっているとは感激です。そんなエピソードが最優秀賞に選ばれ、私もうれしく思います。おめでとうございます。そして、ありがとうございます。取材先の市立西宮高校の担当の先生に伝えると一緒に喜んでくれました。石黒さんに祝意を伝えるはがきを出した日に石黒さんから「悦(よろこ)びを真っ先に伝えたい」と手紙が届きました。「絵はがきは今も大切にし、時々眺めております」。さらに驚いたのは「姿を見て声を聞きたい」と一昨年、芦屋市で行った講演を聞きにきてくれていたというのです。またも感激しました。

 こうした読者との交流が新聞記者として一番の悦びです。他にも、夫を亡くしふさいでいたが「希望をもらった」という女性、長年集めた古い野球本や雑誌を送ってくれた男性、練習場や監督室に『追球』が張り巡らされた高校、部員全員が「内田ノート」で感想を書く野球部……とうれしい交流があります。今回の件でキャンプインを前にまた身が引き締まりました。(内田雅也)

                ▲内田編集委員から石黒さま宛に送った絵ハガキ
▲2017年7月14日付(大阪版)「追球」

■優秀賞【1】 小澤 和夫さん(尼崎市)  

 昭和61年の春、新入社員の私は守衛のおっちゃんと妙に気が合った。共通の話題はプロ野球。おっちゃんは南海ファン、私は阪急ファンで、当時の報われないパ・リーグの球団を応援する同志だった。でも、会うとお互いの贔屓球団や選手を罵り合って楽しむ偏屈コンビだった。

 おっちゃんの愛読紙は「スポニチ」だった。「なんでスポニチ?」と聞くと、「一つの球団をあんまり贔屓しすぎる新聞は好かん」と言っていた。確かにスポニチの記事は多い少ないはあるものの満遍なく各球団の情報が載っていた。「それにな、見出しが簡潔明瞭や」。そう言えば、よく感嘆していた。

 ある日、おっちゃんの顔から表情がなくなっていた。ダイエーが南海球団を買収。掛ける言葉がなかった。それから私は暫くしてテレビで阪急身売りの第一報に接した。翌日の昭和63年10月20日木曜日の朝、おっちゃんがそっと手渡してくれたスポニチ一面の「名門阪急消滅」の6文字が忘れられない。(原文ママ)

【総評】「おっちゃん」とのエピソード、感慨深く拝読させていただきました。「報われない」パ・リーグ球団を応援していたお二人をスポニチがつなぐことができたこと、大変嬉しく思います。「南海買収」「阪急消滅」という悲しい結末も、他の作品にはない見事な構成でした。今後もファンの皆さまの思い出に生き続けるスポニチでありたい、と思いを新たにしました。

■優秀賞【2】 にじのいろさん(所沢市)

題名「縁」

 「競馬で勝ったら結婚を認めてやる」

 初めて夫を紹介した時父は言った。そうは言っても父の競馬歴は三十年以上。ギャンブルとは無縁の夫に勝ち目などない。だが断るわけにもいかず一念発起、二人で競馬を学び始めた。まずはコンビニで競馬に関する情報を集める。すると「スポニチがいいよ。前走成績に単勝オッズと調教内容が載っているのはスポニチだけだから」と店員さん。その後もカフェでスポニチを開いていると「俺ならこの三連単かな」と見知らぬおじさんが声をかけてきた。
 「父に勝たないと結婚できないんですよ」。私がつい愚痴っぽく言うと「じゃあ、これ」と言って真っ赤に書き込まれたスポニチをくれた。何だか嬉しくて、ありがたくて。私たちにとっては万馬券以上の喜び。スポニチでつながった縁が私たちを笑顔にしたことは間違いない。
 結局レースは父が見事に三連単を当てた。その配当金。「ご祝儀だ」とつっけんどんに渡す、父の表情が今も忘れられない。(原文ママ)

【総評】ご結婚にまつわるお父さまとの素敵なエピソード、ありがとうございます。競馬には無縁だったお二人のご結婚という人生の1ページに、スポニチの競馬面が関わることができたこと、感激いたしました。お父さまが配当金をご祝儀として渡すまさかの結末も、ウソのようなホントの話として「映像化してCMにしてはどうか」との話も出たほどです。

■優秀賞【3】 堀田 実花さん(大阪市)

 初めてスポニチを購入した時の目当ては競馬欄だった。身近な人の影響で競馬中継を観るようになり「自分で予想して馬券を買ってみたい」という思いからだった。追い切り情報や厩舎の話題、血統のコラムなど競馬情報が盛り沢山な紙面に満足しつつ「せっかくだし」と競馬以外の記事を読んでみると、ニュースのスポーツコーナーだけではわからない競技のこと、選手のことなどを知れて面白く感じた。読み続けるうちに少しずつ様々なスポーツの知識がつき、それに伴って興味が湧いた。

 気づけばスポーツ観戦が趣味になり、友達の輪が広がった。また、話題が無く二人きりになるといつも天気の話ばかりし、猛烈に気まずさを感じていた職場の上司と会話が盛り上がるようになった。

 今や私にとってスポニチは、娯楽を超えて毎日の必需品となっている。大人の男性が読んでいるイメージが強いかもしれないが、ここに20代女性の愛読者もいることを伝えたい。(原文ママ)

【総評】20代女性の目線からの貴重なエピソードをお聞かせいただき、ありがとうございました。男性のイメージが強いスポニチをこれほどまでに愛していただいていること、感謝申し上げます。「気まずさを感じていた職場の上司」の方との会話が盛り上がるようになったとのこと。微力ながらスポニチが職場でのコミュニケーションの一つとなれたことを光栄に思います。

■優秀賞【4】 酒井 麻里央さん(神戸市)

 「トラ、開幕戦10連敗」から始まる、私のスクラップブック。2000年阪神タイガースの記録。前年6月対巨人戦延長12回、新庄の敬遠サヨナラ打にビビッときた私はそのまま阪神ファンに。新聞記事のスクラップも始めた。

 初勝利は4月4日。翌日、祖父から電話「アレ、送ったで」。届いたアレ、中身はスポニチ、小さく折り畳まれた阪神勝利の記事。うちは普通の日刊紙。だからこそ、このスポニチ情報は貴重だ。しわしわの記事を必死に伸ばしスクラップブックに華を添える。その後も勝利のたびにアレは届く。阪神ファンの仲間が増えて祖父は嬉しいのだ。そして私もスクラップブックを開くたび、勝利が倍に増えた気がして嬉しい。あの年の阪神、最終成績は57勝78敗1分、最下位に終わった。

 あれから23年。その間に祖父は他界し、阪神は2度優勝した。スポニチといえば祖父との思い出。今年の阪神は岡田監督とともに“アレ”を目指す。きっと祖父も天国で「よし、アレやな」とスポニチを送る準備をしていることだろう。

【総評】阪神ファンのおじいさまとの記事スクラップのエピソード、微笑ましく拝読させていただきました。阪神の勝利を伝えるスポニチの「アレ」を心待ちにしていた思いに、胸を打たれました。今年の阪神・岡田監督のスローガンをキーワードとした素晴らしい文章構成でした。今年も数多くの「アレ」をスポニチがお届けできれば幸いです。

優秀賞【5】 逸見 すい子さん(御殿場市)

 「スポニチって、宅配もしてくれるの?」

 20代前半、のちに主人となる人のアパートに初めて行った時の第一声でした。主人は製薬会社の営業マン。18歳から入っていた会社の寮を20歳になると出なくてはならず、アパートを借り、念願だったスポニチの宅配を始めたとのこと。私はスポーツ新聞って駅の売店等で買うものと思っていたので、ビックリしました。

 主人曰く、これも仕事のためだと。スポニチは、スポーツのことはもちろん、社会面や芸能面まで見やすく解りやすい。取引先の病院の先生方と話すには、いろいろな知識を幅広く、短時間で要点を知る事が大事だと言っていました。

 主人が20年前、48歳という若さで急逝してからも、地元新聞とともにずっとスポニチは宅配していただいています。思えばもう50年、変わったと気づいたのはテレビ欄が小さくなったこと位でしょうか。今でも毎朝、主人の仏壇に一度上げてからゆっくり見ています。これからも楽しみに、老眼鏡をかけて購読させていただきます。(原文ママ)

【総評】ご主人さまとのエピソード、しみじみと拝読させていただきました。「これも仕事のためだ」とおっしゃり、スポニチの良さを奥さまにお伝えいただいたご主人さまには、深く感謝申し上げます。また、「宅配もしてくれるの?」という製作者側が意外と気づかない感情を、ストレートに表現していただいた出だしにも惹きつけられました。今度とも末永く、ご主人さまと一緒にスポニチをお楽しみください。